膝・スポーツ・人工関節センター

 

担当医師のご紹介

高齢化社会をむかえ、膝の変形性関節症や関節リウマチ、骨壊死などによる活動レベルの低下は大きな問題になっています。
また一方で、幅広い年代でスポーツ活動が行われるようになり、膝関節周囲の外傷である前十字靱帯損傷や半月板損傷、反復性膝蓋骨脱臼、軟骨損傷、骨折なども増えてきております。当センターでは慶應義塾大学整形外科と防衛医科大学校整形外科の膝関節グループにて数多くの手術を手がけたスタッフが最先端の専門的な治療を担当しています。
小侵襲関節外科や内視鏡手術の進歩により、安全で高度な医療を提供できるよう、保存的治療から手術的治療まで、個々の患者さんに最適の治療方針を検討して診療を行っています。

人工膝関節置換術

変形性膝関節症(図1)やリウマチ性膝関節炎、骨壊死の進行による膝関節の変形が高度であり、ヒアルロン酸の注射・痛み止めの内服・リハビリなどが無効な場合に人工膝関節置換術の適応となります。軟骨が磨り減って、骨が剥き出しになった関節表面を薄く削り、医療用金属と特殊なポリエチレンでできた人工の関節面をかぶせます。関節として接触する表面が人工の関節面で覆われることにより、荷重をかけた際の関節表面での痛みが著しく改善されることが期待できます(図2)。
当院では各患者さんに合わせて必要最小限の皮フや筋肉の切開による手術(小侵襲手術)を取り入れており、術後早期の回復を目指しています。両側に変形が大きく見られる場合は、両側同日手術も行っております。両側同日手術の利点として、全治療期間の短縮、麻酔をかける機会が1回で済む、医療費(負担額)の節約などがあげられます。適応については専門医とよく相談する必要があります。
また人工関節置換術では感染や血栓症の対策が重要になります。当院での人工関節置換術はガイドラインに沿った感染や血栓症対策を取り入れており、細心の注意を払って治療を行っています。
また人工膝関節には全置換と単顆置換があり膝の状態に合わせて選択しています。単顆置換の場合は骨を削る量などが全置換の約3分の1程度になります(図3)。

(図1)変形性膝関節症のレントゲン写真。正面から見て内側の隙間が無くなり、O脚に変形しています。

(図2-A)人工ひざ関節全置換術後のレントゲン写真。 O脚変形は矯正されて理想的なバランスになっています。

(図2-B)前後十字靭帯を温存できる人工膝関節全置換術。靭帯が温存されることでより自然な動きが期待できます。

(図3)単顆置換術後のレントゲン写真。外側の軟骨面が保たれている場合に適応があります。

(図4)高度変形症例。補強インプラントを用いて、歩行が可能な膝に再建します。

近年わが国においても年間数万件の人工関節手術が行われております。人工関節手術の成績は各患者さんに合わせた最適なアプローチや靭帯バランスの矯正、設置角度、機種の選択に大きく依存します。多くの症例を積み重ねた経験が必要です(図4)。当院では人工関節を専門として経験を重ねた医師が治療を担当します。また、術後のリハビリテーションも重要です。当院ではリハビリ専門のスタッフと設備によりきめ細かいプログラムに沿ったリハビリを行ってまいります。
また当院では人工関節手術についてラピッドリカバリー(早期回復)プログラムを導入しております。
詳しくは以下のリンクボタンから特設ページにてご説明しております。

人工関節専門チームによる
ラピッドリカバリー(早期回復)
プログラム

高位脛骨骨切り術

変形性膝関節症でO脚が進行していても、まだ比較的若い方(60歳未満)でスポーツや力仕事などをされる方に適しているのが高位脛骨骨切り術です。O脚になると軟骨の磨り減った膝の内側に荷重ストレスが集中してしまいます。骨切り術によりO脚を矯正することによりストレスが分散され疼痛が緩和されます(図5)。固定器具の進歩により、骨切り部への強固な固定が可能となり以前よりも早期の歩行が可能になっております。骨切り部が癒合した後は力仕事やスポーツなどの制限を設けることはありません。

(図5)O脚変形を矯正し、軟骨のすり減った内側の関節面にかかるストレスを著しく軽減します。

関節鏡視下前十字靭帯(ACL)再建術

前十字靭帯は膝関節の中央に位置し、後十字靭帯とともに膝関節の大黒柱の役目をしています。スポーツ活動による外傷で頻度の高いものの1つがこの前十字靭帯の断裂です。前十字靭帯が断裂すると膝関節は不安定になり、「膝が抜ける感じ」「膝がぐらつく感じ」などを自覚するようになりスポーツ活動の著しい妨げになります。ギプスやサポーターなどによる保存的な治療で十分な安定性を得ることは難しく、活動性の高い方には関節鏡視下前十字靱帯再建術を行います。前十字靱帯の本来の付着部、走行を再現するために、関節鏡を用いて前十字靱帯の持つ2本の線維束を再建します。再建には太ももの内側にある腱を一部採取して、関節内に移植します。切開するのは関節鏡を挿入するための約6mmの傷が2~3か所と腱を採取し関節内に誘導する3~4cmの傷が1か所になります。術後早期からのリハビリテーションが大切で、入院中から外来においても専門のリハビリスタッフが対応します。
元のスポーツ活動への復帰には移植した腱のしっかりした生着が必要であるため、きちんと経過を診察させて頂き、復帰の時期を相談いたします。

断裂した前十字靱帯断裂した前十字靱帯
再建術後 再建術後

関節鏡視下半月板縫合(部分切除)術

活動性の高い若年者の半月板損傷や、中高年者の半月板変性、また先天性の円板状半月板などに対しては関節鏡視下の手術が有効です。関節鏡手術はごく小さな切開から直径4.5mm程度の細長い関節鏡を挿入して行います。半月板部分切除術の場合翌日から全荷重での歩行が可能です。

はまりこんだ半月板はまりこんだ半月板
縫合後縫合後

内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)再建術

反復性膝蓋骨脱臼はいわゆる膝のお皿(膝蓋骨)が繰り返し外れてしまう病態です。膝蓋骨が外側に脱臼しないように抑える最も重要な靱帯(内側膝蓋大腿靭帯)の構造や役割が明らかにされるようになり、当院でもハムストリング腱を用いた内側膝蓋大腿靱帯再建術を行っています。脱臼しやすいその他の要因(関節弛緩性、関節の低形成、下肢のバランスなど)を有していることもありますので、いくつかの治療法を組み合わせる必要がある場合もあります。専門医と慎重に相談することをお勧めいたします。

術後 膝蓋骨が外側に外れかっています
術後 手術後、整復されています。

術後リハビリテーション

これら手術の術後リハビリテーションは専門の理学療法士が担当致します。
整形外科病棟と同じフロアにあるリハビリテーション室で行います。
医師、看護師、理学療法士がチームとして連携し、各患者さんに最適なリハビリテーションを行っていきます。
当院ではいくつかある治療法の選択肢をご説明し、納得していただいた上で個々の患者さんに最適の治療を行えるよう心掛けております。ご心配な点はなんなりとご質問ください。

膝・スポーツ・人工関節センター長 金子大毅